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父は乗り物、母は飲み物   森谷 修

2008年9月掲載

 

 次女が1歳だった頃の話。
 彼女は家族内で“社長”と呼ばれている。そう、我が家で一番偉いのだ。社長はいくつかの喃語とジェスチャーで部下である家族に指示を出す。
 「あい!」と言って手を広げた時、平社員1号である僕(父)はすぐに抱き上げなければならない。そして、指さす方向へお連れするのである。
 社長がうなずけばそれでよし、「 ー」ならそこではない場所に即移動。姉(6年間の保育園生活を経て、現在小学校4年生)はかつて自分が社長だったことなど忘れてしまい、平社員2号として接待を担当している。その姿はまさに小学生太鼓持ち!赤ちゃんせんべいを差し上げたり、絵本を読みまくったり、気持ちよく笑って頂けるよう全力を尽くしている。
 母親はと言うと、やっぱり社長は絶大な信頼を寄せているので、副社長。社長のお相手に忙しい副社長に代わって平社員が夕食をつくることもしばしば。最近は毎日の事となった。全く副社長ばかり優遇しやがって、やってられねーぜ。僕は呑めない酒をあおる日々だ。
 でもね、僕は知っているんだ。
 社長の本当の目的は、オッパイ。そう、社長にとって「父は乗り物・母は飲み物」なのだ。
 さて今日も社長を保育園にお連れするとしますか。平社員1号が抱っこいたしますぞ。

●森谷 修(もりや おさむ)
千鳥在住
カメラマン
著書『銘機浪漫 カメラが僕にくれたもの』『ライカの魔法』(エイ出版社)

 

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