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文文文(bunbunbun)

 

一味違う旅の楽しみ  三戸綾子    

2011年10月掲載  

 

  子育てから解放され、仕事もリタイアし、自分自身のために時間が使えるようになった2002年の秋、娘たちから背中を押されて、英国への旅に出ました。ホームステイをして現地ならではの生活を味わい、英会話のレッスンを受け、現地の観光ツアーに参加するという企画でした。会話どころか文法も忘れ、心細い限りの初めての一人旅は、帰国してみると、普通のツアーとは違う新鮮な感動を受け、楽しい思い出が沢山できました。
 その時友人になったスイス人ヘレンさんからは、今回の東日本大震災の際、いち早くお見舞いメールと共に、娘達や孫も一緒に是非スイスに・・・という有難いお誘いがありました。チェルノブイリの事故以来、ヨーロッパの人々が特に放射能に敏感なのがわかります。
 7年前と6年前に2度、チューリッヒのヘレンさんのお宅を訪れました。その時、息子さんの部屋のクローゼットには兵役で使用した軍服と銃が置いてありましたし、家毎にシェルターの設置が義務となっているとのことでした。フラットの場合、地下に各々4畳半位の厚いコンクリートの扉がついた、独立して生活できる部屋があり、通常は物置、一部はワインセラー等として使用しているのです。永世中立国といえども、緊急時の備えを怠らないという現状を目の当たりにしました。
 その後、2006年秋に訪れた南アフリカもまた、大変印象深い国でした。まさにテーブルの形をしたテーブルマウンテンの麓にある美しい街並みのケープタウン。カラーズといわれる白人との混血、黒人そして数少ない白人と、さまざまな肌の色の人々が街を行き交っていました。車はミニバンと呼ばれる中古のバン(車体の横には日本の会社名が書かれたまま使用されている古い日本製も多い)が、バスより安いので通勤通学に重宝されていました。このミニバンは、停留場もなく、何処でも乗り降り自由、その代わり車はボロボロ!
 27年間投獄され後に大統領になりノーベル賞を受賞した、ネルソン・マンデラさんが過ごしたケープタウン沖のロビン島の、粗末で狭い独房を訪れた時は胸が痛みました。現在は当時、共に抑留された政治犯の方が、その島のガイドとして活躍しています。
 同じステイ先で一緒になった、赤道近くのガボンという国からの若い黒人の留学生は、「80歳位以上の白人の方は、今でも挨拶もしてくれない」と悲しそうに話してくれました。アパルトヘイトは1933年に廃止されましたが、高齢の方の意識はなかなか変わらない一面も残っているのも現実でした。
 アフリカのイメージは暑い!でしたが赤道から遠い南アフリカは凌ぎやすい気候で最南端の喜望峰の海は冷たくて泳げない位。素敵なレンガ造りのワイナリーも多く、安くておいしいのが魅力でした。
 英国へのホームステイという形の旅がきっかけで、自分なりの旅の楽しみを見つけ、国や人種、歴史や習慣の違う方々との出会いは興味深く、思い出は尽きません。次は、どんな旅に出会えるか楽しみです。

●三戸綾子(みと あやこ)久が原在住

 

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