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文文文(bunbunbun)

 

モンゴルからの学生たち 2 招聘奨学生の日本生活  波多野 大介    

2012年9月掲載  

 

 今年も3月20日に男子11名、女子8名のモンゴル人招聘奨学生が来日しました。大田区のASAにも男子3名、女子2名の学生がきました。いろいろな苦労をしながらも、毎日仕事と学校の両立に頑張っています。
 彼らが最初に困るのは、やはり 言葉です。モンゴルのNGOでしっかり事前教育を受けてきていますが、「教室の言葉」と「生の言葉」の違い、特に「聴き取る」ことに戸惑います。ほぼ全員が原付免許試験に一発合格するのは立派ですが、職場内のコミュニケーションには苦労しています。なかにはわかったふりをしてしまって、後で先輩や上司からこっぴどく叱られる学生もいます。
 配達を覚えていく時に一番悩むのは日本の表札です。配達用データで道順や家を覚えていくのですが、表札がローマ字や立派な字体だったりすると彼らはわからないのです。その度に同行して教え、彼らはモンゴル語で一生懸命メモしています。教える方も覚える方も2倍時間がかかります。また、おおらかな国民性のためか、配達の一時休みなどを忘れてお客さまからお叱りを受けたこともあります。ご迷惑をおかけしたお客さま、まことに申し訳ありませんでした。
 そんな彼らも来日から4カ月たち、すっかり日本そして、仕事と学校になじんでいます。「日本にいるのが楽しい」とみんな言います。配達中にお客さまから「ありがとう」「ご苦労さま」とやさしい言葉をかけていただいた時は、満面の笑顔で「日本人はみんなやさしい」と喜んでいます。休日には覚えた電車に乗りパスモを駆使して、あちこちに出かけて日本を楽しんでいます。
 彼らは本当にたくましいと思います。モンゴル人は家族がいつも一緒にいることが当たり前の国民です。慣れない外国での一人暮らしでホームシックになったり、雨の日の配達が辛くて泣いてしまう学生もいますが、最後は必ず「大丈夫です」「私がダメになったら後輩のチャンスがなくなるから頑張ります」と笑顔で言います。今の日本人にはない精神的なタフさを感じます。
 今年も6月にモンゴルへ面接に行き、20名(男子9名、女子11名)の学生を内定にしました。モンゴルの経済発展はやはりすさまじく、また新しい大きなビルがいくつも出来ていました。しかし、経済格差はさらに拡大し、政府や役人のモラル低下(賄賂)も大きな問題のようです。ちょうど総選挙の時期でしたが今回から買収が禁止になったそうです。モンゴルのGDP成長率は約十四%で世界一ですが、そのGDPの40%は資源の輸出によるものです。その資源の採掘も技術者が少ないために、外国(主に中国)に頼っており国内産業の充実が緊急課題になっています。今回面接した学生たちも「モンゴルの政治を変えるために日本で勉強したい」「日本の技術を学びたい」という夢をもっています。技術はともかく、今の日本の政治は…。
 朝日新聞社・ASAは、国際貢献事業として招聘奨学生制度を続けています。2013年度もモンゴル人20名を含む約120名の学生が大きな夢をもって来日します。お客さまにご迷惑をおかけしないようにしっかりと教育しますが、春先には多少のご理解をいただければ幸いです。日本が素晴らしい国だと彼らが思ってくれて、それぞれの国の発展に貢献してくれたらとてもうれしいです。(終り)

 

●波多野大介(はだの だいすけ)ASA下丸子、東蒲田店主

 

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