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楽しみながら大人塾     土岐 啓子    

2013年2月掲載  

 

 

 人は年を重ね、会社人生の卒業や離職、または家族構成の変化などで“時間持ち”になると、地域活動や新しい生き方にも目を向けだす。九年前、私も初めて参加した区民大学の「シニアの生きがい」講座を終了後、有志で立ちあげたのが「シニア大田塾」だ。
 この大人塾は一二名(女性三名、男性九名)で発足し、現在一五名(女性九名、男性六名)。経歴やライフスタイルも様々で個性豊かな人たちが 毎月一回、二時間ほど学習会に集う。輪番制で、担当するテーマは自由だ。単発で公開講座も企画開催している。会報を発行、九年間の活動の歩みを刻んでいる。
 昨年は一月に江戸の「正月遊び」、二月は遺産や相続の問題を、三月は「六郷用水の会」の協力で旧六郷用水の散策路を歩いた。四月は小田原城で、北条氏五代の歴史に触れた。五月は旧前田利為侯爵駒場邸跡で日本建築の粋を味わい、六月はイタリアで研鑽を積んだ女流画家の話を聞いた。
 猛暑の夏は会員が講師で座学。七月は「続・暮らしの知恵」、八月は上海万博を訪れた会員の「上海万博見たまま・聞いたまま」。内容の濃いプレゼンだった。九月は「数独」を楽しみ、一〇月は増上寺や徳川将軍家墓所などを巡った。一一月は四代目市川猿之助襲名後初登場の歌舞伎鑑賞。
 一二月のテーマは異文化。本欄でASA下丸子店主の波多野大介さんが「モンゴルからの学生たち」を連載されていたのを読んだ。モンゴルをとりあげることになり、昨春来日した朝日新聞奨学生エルデネ・ムンフチメグ(愛称メグ)さんを紹介していただいた。メグさんはモンゴル国立大学日本語科の卒業生。可愛らしい民族衣装で登場したメグさんは「既知の世界モンゴルと未知の世界日本」と題して、パソコンの映像も交えプレゼンをしてくれた。
 遊牧社会の五畜(羊、ヤギ、牛、馬、ラクダ)併飼の話や、移動住居ゲルは約三〇〇〇年前と同じで、木の骨組みとフェルトで今も組み立てられていること等の話は興味深かった。遊牧文化の伝統や価値観が現代のモンゴル人の生活にも受け継がれていること、モンゴルの現状などを学んだ。また、若者の間では日本語熱が高いことや、事実婚が増えていることなどを初めて知った。
 悠久の国モンゴルは、いま経済成長著しいが、人口の約七割が三五歳以下という若い国だ。身近で話を聞き、モンゴルの若者たちが、メグさんも含め、将来への目的意識をしっかり持ち努力していることも分かった。
 二〇一二年の活動はこのように無事終了したが、会員たちに大人塾について訊いてみた。参加動機は様々である。生きがいのあるシニアライフ探究という目的に賛同する人、地域での活動に重きを置く人、また「家内に勧められたから」という人も。
 輪番制については戸惑ったがやってみて励みになった、当番準備は大変だが勉強になるという意見。そして、それぞれの面白い企画を楽しみ、既成の枠にとらわれない多岐なテーマに知的刺激を受けている。
 こうした活動を続けてこられたことに、ご協力いただいたみなさんに感謝したい。さて、今年二〇一三年にはどんなテーマが出てくるか楽しみだ。これからも、大人塾で地域社会との絆や交流も深めていきたいと思っている。

●土岐啓子(とき けいこ)久が原在住

 

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