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東松島市災害ボランティア(3)絆・同胞・オムソーリ・好・鎮魂  新倉 太郎    

2013年5月掲載  

 

 なぜボランティアをするのか?とよく人に聞かれます。
 最初のうちは、はっきりと一言で説明ができませんでした。なぜだったのでしょうか。
 私たちは震災直後、この惨状をどう表現していいのか、この悲劇にどう立ち向かっていいのか、それをどう表現していいのか、わからなくなってしまったことを覚えていますか。何を云っても何を表現しても、すべて虚しく感じられました。ことばということばがなくなってしまったような失語症の状態。ことばを一時、喪失してしまいました。でも被災地に通ううち、その問いに対する答えのイメージがなんとなく湧いてきました。いくつかのキーワードから、僕のボランティアに拘わる気持ちを考えてみたいと思います。
 最初に浮かんだことばは皆さんがよくお使いになっている「絆」ということばでした。
 このことばには、繋がっているイメージがあります。そばに寄り添っている感じです。忘れていないことを伝える気持ちを表しています。このことばの由来は、馬の脚にからめてしばるひものことであり、その意味することは、縛って自由に行動できなくすることなのですが、逆に云えば、そのお互いを繋げているひもは、互いに身を任せることを表しています。ちょうど登山でお互いの体をザイルで結び合うように相手への無条件の信頼を表現しています。この「絆」ということばはすばらしいメッセージ性のあることばだと思います。
 「同胞」ということばが好きです。兄弟姉妹。同じ国民・民族のこと。「はらから」。同じ母親から生まれた兄弟姉妹のこと。同国民。どうほう。とても濃密で極めて身近な存在のイメージです。日本列島という母から生まれた僕たち。運命共同体。生きるも死ぬのも一緒という感覚。「はらから」なのだから、困っている時に手伝うのは当たり前です。
 「オムソーリ」ということばを見つけました。スウェーデン語で 「悲しみの分かち合い」という意味だそうです。他人の痛みを分かち合うこと。痛みの一部を引き受けること。自分も悲しみの土俵の上に立ってそこに参加したいと思います。
 「好」、あるいは「誼」。「よしみ」と読みます。このことばも好きです。親しいまじわり。親しみ。交誼。ちなみ。ゆかり。因縁、という意味ですね。
 最後に「鎮魂」ということばです。この震災で二万人を超える人々が亡くなったり、また行方がわからないままになっています。ボランティアとしてその土地に行き、体を動かすことそのものが、彼らの魂を鎮める行為になっていたらいいな、と思っています。
 そういうことばが僕をボランティアに掻き立てさせるのだと思うのです。なぜボランティアをするのか、ということを問われれば、こうしたことばを心の中に思い浮かべ、そういうことばを定義していくことが、その答えになると思うのです。 おわり

●新倉太郎(にいくら たろう)久が原在住

 

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